| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-035 (Poster presentation)
里草地の絶滅危惧種の中にはフェノロジーなどの基礎的生活史情報すら不明のまま個体数が激減している種も少なくない(市川・前中, 2003)。その個体群の存続や回復には次世代供給である種子の発芽特性を含めその生育環境条件を明らかにしてく必要がある(e.g. 鷲谷, 1996 ; 本田・倉本, 2001)。材料としたアイナエはマチン科アイナエ属の1年生草本で、近畿各府県で保護を要する種となっており、大阪ではレッドデータブック(2000)で絶滅種とされていた。その後、都市近郊やベッドタウンに残った草地で再発見され、レッドデータブック(2014)では絶滅危惧Ⅰ類となったが。その保全のために重要な繁殖生態学的情報が不足している種の1つともなっている。
そこで本研究では絶滅危惧植物アイナエの保全のために、生活史特性(特にフェノロジーと交配様式)と発芽特性の解明、生育に適する光環境・土壌水分条件の解明、調査地での除草処理の効果の調査を行った。
その結果、(1)アイナエは調査地では5月下旬に発芽伸長し7月下旬に開花が開始した。また交配様式は自殖型と考えられた。段階温度法実験からは種子の最適発芽温度は25-30℃で光発芽種子であることが判明した。(2)生育には光環境が重要であり、土壌水分条件との関連性は認められなかった。(3)除草実験により多くの実生の出現を確認出来た。これらのことからアイナエの保全には光環境が重要であり、生活史ステージに合わせた草刈りなどの適切な人為的管理の必要性が示唆された。