| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-036 (Poster presentation)
種多様性の成立パターンの解明のためには種の分布がどのような要因で決定されているかを明らかにすることが重要である。これまで、植物の分布面積の決定に関わる形質としては、種分化後時間、倍数性、生殖様式(自殖・他殖)が個別に報告されているが、これらの形質の影響度の違いを比較して評価するなどの総合的な研究は植物では行われていない。また、環境変動に対する適応力を評価するには、分布面積よりも生育可能な環境の多様性を指標にしてその決定要因を探ることが重要であると考えられるが、植物の生育環境多様性の決定要因は研究されていない。そこで、本研究では、植物種の分布内の環境多様性にどのような要因が強く影響しているか明らかにすることを目的とし、対象種は米国カリフォルニア州の固有植物264種とし、種分化後時間、染色体数、倍数性(2倍・多倍)、生活史(1年草・2年草・多年草)、生殖様式(自殖・他殖)を要因として想定し、それらの影響を比較評価して特に重要な要因を特定した。系統的な影響も排除して形質の影響だけを抽出した結果、生育環境多様性に対する影響として生活史だけが有意な影響を持つ要因であった。1年性の種で最も生育環境多様性が小さく、木本で最も大きくなるという影響であった。木本は遺伝的多様性が高いことを示す研究があり、それが木本の環境適応力の高さに寄与しているのかもしれない。また、寿命の長い生活史ほど、一生のうちに多様な環境を経験するため、多様な環境に生育できるようになる選択圧が草本よりも強かったことも考えられる。今後、形質データの揃っている種を新たに追加する、または解析に用いる分類群を小さくし考慮する説明要因を増やすなどして、さらなる研究が必要である。