| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-038 (Poster presentation)
半寄生植物ツクバネ(Buckleya lanceolata)の宿主特異性は小さく、地形要素が分布を規定する因子のひとつであることが明らかになっている。しかしツクバネが分布すると報告された地形においてツクバネの分布密度には差異があり、ツクバネの局所分布を規定する因子は地形の他にもあると考えられる。本研究では、上木との位置関係や相対的な光環境からツクバネの分布に影響を与える要因を解析した。
岐阜県岐阜市金華山の北向き斜面に水平面積0.0625haの調査プロットを設置し、生育するツクバネの樹高、樹幹長、根元直径、立木位置を測定した。ツクバネは萌芽するため、地際から分かれているものを幹、幹同士が目視で連結しているとみなした複数の幹を個体とした。また、上木のDBH、立木位置を測定し、樹種を記録した。分布関数を用いてツクバネの分布様式やツクバネと上木との分布相関を調べた。光環境は地上高2mにおけるrPPFDを測定した。
ツクバネは調査プロットに306幹、105個体分布しており、個体単位で分布を調べると集中分布していた。ツクバネと上木は排他的または独立的に分布しており、同所的に分布する上木の樹種は存在しなかった。調査プロット全体とツクバネが生育していた場所のrPPFDの頻度分布を比較したところ、ツクバネは明るい場所に偏って分布していた。しかしながら、散乱光環境であるrPPFDの水平分布とツクバネの局所分布との間にはずれがあり、林冠ギャップからの直射光の入射位置を推定すると、直射光が射し込む場所にツクバネが多く分布する傾向があった。
ツクバネは明るい場所に偏って分布していたが、散乱光による光環境だけでなく、直射光を加えた光環境でツクバネの分布を評価する必要があると考えられる。