| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-043 (Poster presentation)
年輪は樹木の成長を反映しているため、年輪からは様々な要因の情報を読み取ることができる。しかし、個体群レベルで年輪幅と各要因との関係を解析した研究が多い一方で、個体サイズを考慮して個体レベルで年輪幅に対する各要因の影響の程度やパターンを検証した事例は少ない。
本研究では、青森県八甲田連峰西部においてブナ林冠木74個体をGBH(胸高周囲長)に基づいて4サイズグループに分け、気象要因(月平均気温・月降水量・月最大積雪深)と結実豊凶の影響がサイズグループごとに異なるかを調べた。分析では、相対年輪成長率を従属変数とする線形混合効果モデルを用いて回帰係数を算出し、年輪幅の期待値を求めて検討した。
分析の結果、全ての気象要因について凶作年と豊作年の間で年輪幅に及ぼす影響に有意な差が確認された。また、月によってはサイズグループごとに気象要因と年輪幅との相関の傾向(符号)が異なる場合あった。凶作年に対して豊作年は年輪幅が小さくなる傾向が認められたが、気象要因によってはGBHが最も小さいサイズのグループにおいて豊作年の方が凶作年よりも年輪幅が大きくなる傾向が認められた。
サイズグループによって気象要因の影響の程度やパターンが異なることは成長に配分する同化産物量の結実豊凶による変化を反映していると考えられる。豊作年は結実に同化産物を多く配分するため葉量が減少し、結果として、凶作年より豊作年に年輪幅が減少すると考えられている。しかしながら、個体サイズが大きいほど結実量が多いために葉量の減少量も多くなるとすれば、結実量の少ない比較的小さい個体は、受光量が増加するため年輪幅が増大すると考えられる。