| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-046 (Poster presentation)

タカクマヒキオコシ群の交雑帯における遺伝的・形態的変異

*荻嶋美帆(東北大・院・生命科学),堂囿いくみ(学芸大・教育・生物),星野佑介(首都大・院理工・牧野標本館),山城考(徳島大・院・SAS研究部),堀江佐知子(東北大・院・生命科学),牧雅之(東北大・植物園)

シソ科ヤマハッカ属タカクマヒキオコシ群は、西日本に生育し、秋に筒状の花を咲かせる。兵庫県周辺において、日本海側では花筒が長く,太平洋側では花筒が短くなるという地理的な変異が見られる。中立マーカーを用いた解析の結果、この地域ではタカクマヒキオコシ群に含まれる二変種(タカクマヒキオコシとサンインヒキオコシ)の二次的な接触によって、交雑が起こっている可能性が示唆された。そこで本研究では、遺伝的・形態的な解析を通して、交雑帯の実態を明らかにすることを目的とした。

交雑帯に含まれると考えられる集団と、その辺縁部にある形態的に純粋なタカクマヒキオコシとサンインヒキオコシの集団、計11集団を調査対象とした。中立遺伝子と形態の交雑指数を求めた結果、日本海側から太平洋側にかけて花筒の長さは短くなり、葉は細くなる傾向が見られた。また、タカクマヒキオコシ型の形態を示す南端集団と、サンインヒキオコシ型の形態を示す北端集団は、同じような遺伝的な交雑指数を示した(どちらも交雑指数0.9以上)。つまり、中立遺伝子と形態の交雑指数の変異が一致しておらず、生育環境からの選択圧によって形態が変化していると考えられる。

また東日本に生育するヤマハッカ属イヌヤマハッカ群も、花筒長に地理的な変異が見られる。形態測定の結果、タカクマヒキオコシ群と同様に日本海側で花筒が長く、太平洋側で花筒が短い傾向が見られ、北端集団から60km南下すると花筒長は約2分の1になるほどの変異が見られた。今後、葉形態や中立マーカーを用いた解析を追加して、イヌヤマハッカ群の形態変異の要因を解明する予定である。


日本生態学会