| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-049 (Poster presentation)

気象要因が北方針広混交林の40年間の動態に与える影響

*佐藤郷(北海道大学環境科学院),日浦勉(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

気候変動下での森林動態の応答は地球の炭素循環に深く関わるという観点から、長期研究が特に熱帯地域で進められてきた。中・高緯度地域の森林は、熱帯林に比べて個体密度など林分構造や樹木の生育期間などに大きな違いがあり、さらに高緯度になるほど将来の気温の上昇率が大きいと予測されているため、これらのバイオームでも森林動態におよぼす気象要因の影響を評価する必要がある。本研究では、北海道の針広混交林の40年間の動態と気象要因の経時的変化の関係を解析した。

調査地は北海道大学中川研究林の長期観測サイト15か所(計17.5ha)であり、胸高直径10cm以上の約1万個体を対象に、約5年おきの成長率、死亡率、新規加入率を計算した。気象データ(アメダス)は生育可能期間(5-10月)の平均気温、降水量、日照時間および冬期(11-4月)降水量を用い、さらに密度の指標として林分ごとの胸高断面積合計などを説明変数に加え、一般化線形混合モデルで変数選択にかけた。また、北海道では風害が重要な撹乱要因と考えられるので、死亡率、加入率の解析には最大瞬間風速も説明変数に加えた。なお、この地域では過去40年間で年平均気温が1度上昇しているほか、夏期の降水量も増加傾向にある。

成長率に対し降水量と日照時間が抑制効果を、冬期降水量が促進効果を示したが、平均気温は樹種によって促進的、抑制的に働く場合がみられた。死亡率は多くの樹種で最大瞬間風速が死亡率を高める効果があり、撹乱としての風害の重要さが示されたほか、平均気温と日照時間が死亡率を高める樹種がみられた。また胸高断面積合計が成長率と加入率に抑制的に、死亡率に促進的に働いたので、気象要因などの広域的な要因に加え、林分内の樹木間競争といった内的な要因の経時的変化も動態に影響を与えていることが示された。


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