| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-050 (Poster presentation)

亜高山帯針葉樹林にブナは侵入するか?

*伊豆凜太郎,中静透(東北大・院・生命科学)

気候変動の影響による今後100年間のブナの分布適域の大幅な縮小と高標高域への移行が分布予測モデルで予想されているが、高標高域の分布適域へ実際に分布を拡大可能かは分かっていない。現在までの分布域上昇については、ブナの上部植生である亜高山帯針葉樹林の後退は示され、ブナの上昇についても上部植生が荒地の場合については報告されているものの、亜高山帯針葉樹林へのブナの侵入を扱った研究はなかった。

本研究では東日本の16山において、ブナ林から亜高山帯針葉樹林への移行帯で計20本のトランセクトを取り、枯死木とその周りのギャップ(総数422個)を観察することで針葉樹林へのブナの侵入を調べた。枯死木の樹種と周辺のブナ/針葉樹の有無に着目してWI(暖かさの指数)との関係を調べたところ、若木・成木に比べて低標高・高温域(高WI)で枯死木の樹種がブナから針葉樹へと変わるが、高標高・低温域(低WI)でのブナ若木の針葉樹林への侵入は見られず、針葉樹は後退しているもののブナの上昇は見られないと示唆された。併せてササの高さ・積雪深・開空度を解析した結果から、ササによるブナの更新阻害がブナの上昇に影響を与えている可能性も考えられる。


日本生態学会