| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-052 (Poster presentation)
花の形質の構成要素は、送粉量や種子数を最大化する適応的な数や形に進化するが、集団内でも、①資源量の大小や②開花日の違いにより変異が生じると推測される。フクジュソウ(Adonis ramosa) は、花弁数等に多様性があり、また雪解け直後に咲くため、融雪時期により局所的に開花日が異なる。そこで、本研究では、本種の花の形質の変異とその要因を①、②の観点から検討した。
福島県只見町黒谷川沿いの調査地にある81花において個体サイズ、花弁数、雄しべ数、胚珠数、花面積、雄適応度(雄しべ数×訪花数)、雌適応度(成熟種子数)を記録した。また、本種は向日性で、花の内部の温度を高めて昆虫を誘引し、種子の発達を促すと報告されているため、花の内外の温度差を測定した。
解析の結果、①花弁数は資源量(個体サイズ)とともに増加した後、13枚で飽和した。一方、花面積は飽和せずに増加し、花面積のうち、ディスプレイサイズは雄適応度と、花弁の重なりの面積は雄・雌適応度と有意な正の偏相関があった。また、花内の温度上昇にはディスプレイサイズではなく花弁の重なりの面積が有意な効果を持つことがわかった。②主な訪花昆虫は前期はハエ類、後期はハチ類とハエ類で、訪花数は後期が多かった。このため後期開花個体は雄適応度が高かった。しかし、前期花では訪花数と稔実率は低いものの、胚珠数が多く、そのため雌適応度は前後期で差が無かった。資源量が大きい個体は、二花をつける場合があるが、その初花は全て前期に開花した。
以上から、調査した集団では、繁殖に投入し得る資源量や開花時期が、環境の違い等によって個体間で異なることが、花の形質の多様性を引き起こしていると言えた。