| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-060 (Poster presentation)
雌雄異株植物個体群における性比は,有性生殖の成功に影響を及ぼすことから,個体群の存続を考えるうえで重要である。雌は,花だけでなく果実を生産するため雄よりも繁殖コストが高くなり,土壌養分や光,水分をめぐる競争が激しい場所での生残率が低いといわれる。この生残率の雌雄間差により,雌雄の空間分布様式に違いが生じ,局所的に性比が偏ることが予測される。雄雌間の距離が遠ければ送受粉効率が低下し,有性生殖が成功しにくくなるものと考えられる。複数幹樹木は,台風や洪水などの地表撹乱や動物の摂食によって地上部が損傷した場合や,光や土壌養分が不足する生育条件下でも,萌芽更新による個体維持が可能である。このことから,単幹タイプの雌雄異株植物と同じような雌雄間差や,性比の偏りがみられない可能性がある。本研究は,山地渓谷林の下層を優占する複数幹を持つ雌雄異株樹木チドリノキ(ムクロジ科カエデ属)を対象に,個体サイズ,動態,空間分布における雌雄間差について調べた。また,個体サイズだけでなく,個体内の幹サイズのばらつきを示すジニ係数を求め,雌雄で比較することで,幹サイズのばらつきが繁殖に及ぼす影響を検討した。