| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-062 (Poster presentation)

北タイ熱帯山地林における着生シダの機能形質と資源分配戦略

*田中美澄枝, 中西晃(京大院・農), Sungpalee W., Sri-ngernyuang K.(Maejo Univ.), 北島薫, 神崎護(京大院・農)

植物の機能形質とは、植物の生態的戦略と関係する測定可能な形質を指し、さまざまな環境勾配に沿って種内・種間変異を示すことが知られている。着生植物においては、群落内の光・水分・栄養分の垂直勾配に沿った機能形質の変動が予想される。また、種間の形質の違いは、種の生育範囲と深く関連しているだろう。本研究では、熱帯山地林で優占する着生シダ植物7種(常緑2種、落葉5種)に着目し、葉と根茎の機能形質を比較し、生育環境との連関性を解明することを試みた。

調査はタイ北部ドイインタノン国立公園内の1700 m地点に設置された熱帯山地林長期生態調査区内で行った。2014年9~10月(雨期)と2015年2月(乾期)にOleandra wallichiiほか計7種80個体から植物体試料を採取し、LMA(単位面積あたり葉重)、葉厚、葉中と根茎中の窒素濃度や糖とでんぷんの濃度など13形質を測定した。

群落内での種の垂直分布から構成種は異なる垂直分布を持つことが確認された。群落上層から下層にかけての光環境の変動に伴い、LMAなどの形質が対応して変化していくことが予想されていたが、このような連関性は認められなかった。これは着生植物の分布を規定する微細環境の指標として、地上高という指標が不十分なことが原因かもしれない。一方、今回対象とした7種の中では根茎が横走しない常緑種と根茎が横走する落葉種との間の形質は顕著に分離していた。落葉種の林冠内部での出現確率は前者よりも高く、乾季・雨季の強い季節性を持つ着生環境に対して、落葉性と横走する根茎の組み合わせが適応的であることが示唆された。


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