| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-066 (Poster presentation)
マレーシア森林研究所の見本林に生育するフタバガキ科樹木112種と非フタバガキ樹木240種の長期フェノロジーデータを分析した。その結果、種ごとに繁殖頻度は大きく異なり(0.00回/年~1.77回/年)、フタバガキ科種では54種(48.2%)が一斉開花タイプに分類されたが、非フタバガキ種ではわずか21種(8.8%)であった。開花・結実の季節性について検討したところ、全体的に春(4月)と秋(10月)に開花が多く見られ、フタバガキ科種は非フタバガキ種よりも明瞭な二山型のピークを示した。35年間における繁殖同調の頻度をみたところ、フタバガキ科種で16度、非フタバガキ種では18度で見られ、最も規模が大きな同調は1985年の秋で、全352種のうち175種(49.7%)結実していた。同調前の気象条件を検討したところ、1990年から2010年の間に生じた6回の繁殖ピークの前に、少なくとも5回で低温(最低気温20℃以下)か乾燥(30日間積算降水量が40mm以下)のどちらかもしくは両方が見られ、気象条件に対する開花応答を種ごとに検討したところ、Dipterocarpus crinitusなどの6種には乾燥が、D. hasseltiiなどの9種には低温が開花に有意な影響を与えていた。以上から、一口に繁殖同調と言ってもその規模や構成種の違いなど、質的な変異の存在が示唆された。本研究によって、東南アジアの熱帯雨林林冠構成樹種は、種によって繁殖の頻度や同調性、環境応答などのバリエーションが多様であることが明らかとなった。