| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-068 (Poster presentation)
蛇紋岩地帯である早池峰山は貧栄養環境であるとともに多くの植物に対し有害となる高濃度のNiを含有するが、ヒバの自生が確認されている。ヒバは毒性元素の解毒物質と考えられるカテキン類を代謝産物として産生するため、早池峰山で自生するヒバがNiを蓄積する場合、代謝産物を介したNi耐性機構をもつことが推測される。また内生菌には植物に対し代謝産物の産生促進や重金属耐性の増強などの機能を付与・促進する菌種の存在が知られている。
本研究では早池峰山に自生するヒバを対象に、代謝産物や内生菌との相互作用がNi耐性にどのような影響を与えているのか考察しヒバのNi耐性メカニズムを明らかにすることを目的とした。
早池峰山で採取したヒバの無機元素を分析した結果、地上部・根部ともにNiを含有し特に根部で高濃度に蓄積していた。一方で葉部は高濃度のCaを含有し、CaがNiの葉への移行を競合的に抑制していると考えられた。代謝産物を分析した結果、カテキン、縮合型タンニン、リンゴ酸などの産生が確認されこれらの化合物がNiの解毒物質として機能していると考えられた。次に早池峰山に自生するヒバにおいて特にNiを高濃度に蓄積していた根部から内生菌を分離したところ、Cryptosporiopsis及びPhialocephala属糸状菌が主要な内生菌として確認された。これらの内生菌はCa吸収や代謝産物産生の促進など植物の機能を向上させることが知られているため、間接的にヒバのNi耐性に関与している可能性が示唆された。現在はヒバに対する上記の内生菌の接種試験を検討しており、ヒバ体内のNi、Ca及びカテキン等の分析を行うことで、内生菌によるNi耐性の向上を評価する予定である。