| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-084 (Poster presentation)
ケイ素は植物の複合ストレスを緩和する有用元素であり、近年ケイ素の生態学的意義にも関心が寄せられている。しかし広葉樹におけるケイ素の集積機構はあまり研究が進んでいない。土壌水に溶解したケイ酸は根から吸収され、蒸散流によって受動的に地上部に輸送され、葉のように蒸散量の多い器官に集積されることが知られている。しかし葉内のケイ素分布を定量的に示した研究はない。今回の研究では、ケイ素は葉内でも蒸散の多い組織に集積されるという仮説を立て、葉の部位ごとのケイ酸含有量を測定した。2015年12月に京都市内においてクワ科2種(イヌビワ、カジノキ)と、ムクロジ科2種(トウカエデ、ウリハダカエデ)の生葉サンプルを採取した。葉を葉柄、主脈、葉身(内側)、葉身(外縁側)の4つに切り分け、スキャナーと画像解析ソフトImageJを用いて部位ごとの面積を測定した。サンプルを絶乾させて粉末にしたのちに1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて85°Cで一晩振とうし、抽出液のケイ酸濃度をモリブデンブルー法を用いて測定した。
結果は、すべての種において、単位重量あたりのケイ酸含有量は葉柄(0.17~4.3 mg/g)、主脈(0.68~19.5 mg/g)、葉身(20.7-132.1 mg/g)の順に高かった。面積当たりのケイ酸含有量も葉柄、主脈、葉身の順に高かったので、ケイ素は蒸散が盛んな部位に集積されるという仮説は支持された。葉身の中心部と外縁部とでは、重量あたり面積あたりでともに外縁部の方がケイ酸含有量が高かった。葉の表面の境界層の影響で葉の中心部よりも外縁部のほうが蒸散量が多いといわれているので、ケイ酸含有量も外縁部のほうが高かったことのよっても、ケイ素は蒸散量の多い部位に集積されるという仮説は支持された。