| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-085 (Poster presentation)
落葉広葉樹林の林床の光環境は、林冠葉群のフェノロジーや葉群密度、ギャップの大きさにより時空間的不均一性が高い。林床に生育する低木では、光環境に対して可塑的に生理・形態的性質を発達させることが予測される。本研究では、光環境に対する2種の低木の形態的・生理的特性の応答が光合成生産にもたらす効果を明らかにすることを目的とした。
調査は岐阜大学高山試験地の冷温帯落葉広葉樹林で行った。林床に優占するノリウツギとオオカメノキについて、光環境(全天写真、光量子センサー)、個葉の生理的特性(クロロフィル含量、光合成特性)、形態的特性(葉面積、LMA、葉数)の季節変化を計測した。これらの調査は密な閉鎖林冠下と林冠ギャップ下で各3個体ずつからシュートを対象に行った。
林床への入射光量は林冠木の展葉に伴って減少し、5月下旬には全天下の10%未満となった。オオカメノキでは林冠が閉鎖する22~25日前に展葉し始めた。SPAD値は展葉直後に、葉面積は5月下旬に7割に達した。最大光合成速度は春から初夏にかけて最も高く、閉鎖林冠下とギャップ下で4.7と6.0µmol CO2 m-2 s-1となり、夏季には減少し始めた。ノリウツギでは林冠が閉鎖する10~18日前に展葉を始め、葉面積は夏季に成熟した。最大光合成速度は夏季に最大となり、閉鎖林冠下とギャップ下で6.6と7.3µmol CO2 m-2 s-1であった。光合成能力、葉面積、光環境から推定した一生育期間の光合成生産量から、オオカメノキでは春先の高い光合成生産力が、ノリウツギでは夏季の高い光合成能力と、ギャップ環境への順化が生産力を高めていると示唆された。