| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-086 (Poster presentation)

付着根型つる植物2種の負の光屈性に成長はともなうのか?

*秋吉由佳(岐阜大院・応生),川窪伸光,小見山章,加藤正吾(岐阜大・応生)

植物は光が照射された側と反対側との間の伸長量に差が生じ、明るい方向へ茎の屈曲が生じることによって正の光屈性を示す。付着根型や吸盤型つる植物では、支持ホストの根元にたどりつくために、負の光屈性をすることが報告されている。正の光屈性と比較して、負の光屈性のメカニズムの研究は少ない。本研究では、負の光屈性を示すことが知られている付着根型つる植物イワガラミとテイカカズラの負の光屈性の成長との関係に着目して、負の光屈性の特性を解明することを目的とした。

実験ではイワガラミとテイカカズラの匍匐シュート、それぞれ12シュートに一方向から人工光を照射した。実験は7日間おこなった。シュートをデジタルカメラでフラッシュを使用せずインターバル撮影した。シュート先端の座標は1時間ごとの写真から計測し、各節間の座標は実験開始日と実験終了日の明期開始時に測定した。日長条件は12時間日長に設定した。

イワガラミの匍匐シュートは明期に正の光屈性、暗期に負の光屈性を示した。節間ごとに解析すると、シュート先端から数えて2節間目が最も活発に伸長しており、負の光屈性を示していた。伸長量を調べると、明期の伸長量よりも暗期の伸長量が大きな値をとる傾向にあった。イワガラミの匍匐シュートは、暗期に活発な伸長成長をともなって負の光屈性を示していた。一方、テイカカズラは明期に負の光屈性を示し、暗期には正と負の両方の屈性を示す場合があった。節間ごとに解析すると、シュート全体を通して屈曲がみられ、伸長成長の停止している根元に近い節間も正や負の光屈性を示した。テイカカズラの匍匐シュートの屈性反応は、成長をともなわない部位にも生じていた。付着根型つる植物の匍匐シュートには、少なくとも2種類のメカニズムの負の光屈性が存在していることが明らかになった。


日本生態学会