| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-089 (Poster presentation)

地上、地下部呼吸バランスから見た陸上植物の生き方

*芳士戸啓(山形大・農),王莫非(山形大・農),相澤拓(山形大・農),Juan Pedro Ferrio(リェイダ大),森茂太(山形大・農)

根を含んだ大型樹木個体の呼吸測定は困難であるため、これまでは各器官の一部を測定し、そのデータから推定した研究が殆どであった。しかし、個性のある樹木の個体呼吸を正確に評価するためには実測研究を進める必要がある。これまで草本と木本の個体呼吸特性を比較した研究は殆どなかった。そこで本研究では成長特性の異なる草本と木本の地上部と地下部の呼吸を実測し、両者に共通した陸上植物としての特性を検討した。

木本と草本を比較するため、オニグルミ22個体、スギ32個体、トウモロコシ22個体、ダイコン20個体、オオバコ19個体、アツミカブ34個体を選定した。最小~最大個体の生重量幅は約10,000,000倍であった。これら個体の地上部、地下部の呼吸速度を材料サイズに応じて複数の自作チャンバーで正確に実測した。また、測定値の比較に際して同一温度に補正した。

以上の測定から、地上部と地下部のそれぞれで重量と呼吸の関係を検討した。その結果、材料には系統の異なる草本と木本を使用したにも関わらず、これらに共通した個体サイズに沿った地上、地下部呼吸のトレードオフ関係が生じた。このため、個体全体では重量と呼吸の関係はサイズ依存して一定傾向となり単純ベキ関数でよくモデル化できた。

この結果は、地上部と地下部に必要な呼吸が相互に深く関連していることを示しており、炭素獲得を行う地上部と水獲得を行う地下部のバランス制御が個体呼吸を単位に行われることを示しているのだろう。


日本生態学会