| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-093 (Poster presentation)
ウワミズザクラ(Padus grayana)は以下のような異なる3種類のシュートを形成する。年々伸長を重ねて樹冠の骨格を形成する構造枝、秋に脱落する使い捨ての葉状枝、先端に花序を形成し葉状枝と同様に秋に脱落する花序枝である。ウワミズザクラの持つ使い捨ての当年シュートは、資源獲得競争や環境への適応に利点があると考える。本研究はこれを考察するために葉状枝と構造枝の間の機能、構造の違いを明らかにすることを目的とした。
試料採取は2015年6月から8月に京都府北部に位置する京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林にて行った。日当たりの良い個体5個体を選択し、シュートを採取した。構造枝は腋芽を持ち、葉状枝は持たないことで両者を区別した。光利用に関する指標としてLMA・個葉面積・葉の窒素濃度を、水利用の指標として炭素同位体比・葉脈密度・材の平均道管面積を測定した。構造的な違いはシュート内での枝-葉間の資源配分・材のヤング率を用いて評価した。
葉状枝では構造枝と比べて個葉面積が小さく、LMA・葉の窒素濃度が低かった。水利用に関しては構造枝で葉脈密度が高く、平均道管面積が大きい結果となった。これは、構造枝は光環境の良い先端につく傾向があることから、光環境の違いが影響すると考えられる。構造的な違いについては葉状枝で枝への資源配分が少なく、材のヤング率が低かった。以上のことから、葉状枝と構造枝は機能・構造において違いがあり、葉状枝は低コストで葉をたくさんつけ光の確保をする役割、構造枝は光および空間を確保する役割を持つことが示唆された。