| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-096 (Poster presentation)

落葉広葉樹における木部通水機能の回復と樹体の生理活性

*粟飯原友,三木直子(岡大院・環境生命),小笠真由美(森林総研)

変動する土壌水分条件下で木部通水機能を維持する上で重要な通水機能の回復性は、空洞化した道管が再び水で満たされること(再充填)によって起こると考えられている。道管の再充填による回復性は種によって様々であるが、種特有のどのような生理的特性が種間差に影響するのかについては明らかにされていない。再充填は隣接する生細胞から空洞化した道管への糖輸送に基づく浸透勾配が引き金となり起こると考えられている。そのため、再充填による回復性の種間差には、糖の輸送に関わる樹体の生理活性や糖の輸送経路として重要な木部柔細胞の分布といった木部の構造的特性が、影響することが予想される。本研究では、回復性の異なる落葉広葉樹6種のポット苗を用いて、木部横断面における柔細胞面積の割合などの木部の構造的特性や、湿潤時と乾燥時(水分通導度を約50%失う程度の水分状態、Ψ50)の樹体の各種生理活性(最大光合成速度、幹の可溶性糖含量)、および膨圧を失うときの水ポテンシャル(Ψwtlp)を求め、これらと通水機能の回復性との関係性を評価した。その結果、木部の構造的特性と通水機能の回復性の間に明確な傾向は見られず、湿潤時の光合成速度が高い種ほど通水機能の回復性が高い傾向がみられた。また、湿潤時および乾燥時における可溶性糖含量、乾燥時の葉の膨圧損失に対する安全性(Ψ50とΨwtlpの差)が高い種ほど、回復性が有意に高い傾向があった。以上の結果より、回復性の種間差には、木部の構造的特性ではなく、湿潤時の光合成能力の高さや幹の可溶性糖含量の高さが関与していると考えられた。さらに、乾燥(Ψ50)時の葉の活性の高さが、乾燥下における葉から幹への糖の転流に寄与し、空洞化した道管への糖の輸送をもたらしている可能性が考えられた。


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