| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-102 (Poster presentation)

シダ植物における光合成能力と通水組織の比較

*藤居 慧, 西田 圭佑, 半場 祐子 (京都工繊大・応生)

植物はコケ植物→シダ植物→種子植物の進化過程で、水輸送組織を発達させてきた。水輸送機能の発達・維持は葉への継続的な水分供給を可能にし、変化し続ける外部環境に対して葉への安定した水供給を実現する。維管束植物(シダ~種子植物まで)の進化においてシダ植物は維管束による水供給を初めて獲得した重要な分類群である。植物は外部水環境や葉の水状態に敏感に反応して気孔開閉を制御しており、蒸散による水損失と二酸化炭素獲得のバランスを最適に保っている。シダ植物は原始的な種から高度に環境適応した種まで含まれているため、陸上植物が進化上獲得した性質を調べるのに適している。本研究では研究材料として種子植物より原始的ではあるが、維管束や気孔を持つなど種子植物に最も近い特性を備えているシダ植物に注目した。

結果:通水コンダクタンスと仮道管サイズのそれぞれが気孔コンダクタンスへの有意な正の相関関係が得られた。しかし、仮道管サイズと通水コンダクタンスの間には相互関係は見られなかった。シダ植物の通水コンダクタンスはかなり低く、~10 mmol m-2 s-1 MPa-1程度であった。また、仮道管の大きさは直径 ~30 μm程度が最も多くを占めており、仮道管数は原始的な種ほど少ない傾向にあった。葉柄部分の維管束においてはシダ植物にみられる独自の維管束の配置、原生中心柱や網状中心柱が見られた。今回、仮道管サイズ増加に伴う水輸送での構造機能と、光合成の制限要因である気孔コンダクタンスでの直接関係が原始的な維管束植物であるシダで確認された。シダ植物よりも進化した針葉樹や被子植物ではこうした関係の報告はされておらず、シダ植物における構造機能と生理機能の直接関係は針葉樹や種子植物への進化過程での環境適応で失われたと考えられる。


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