| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-104 (Poster presentation)
内モンゴル自治区フルンボイル草原では人口増加による家畜飼育頭数の増加や、中国政府による遊牧民の定住化政策により過放牧が問題となっているが、放牧の程度が強い場所において、Allium polyrhizum Turcz. ex Regelの群落内の優占順位が高いことが知られている。また、内生微生物はストレス環境下で植物の生育能力を促進する役割が知られているが、過放牧による採食や踏みつけのストレス環境下でも内生微生物が植物の生存能力を高めているのではないかと考えた。よって、本研究ではA. polyrhizumの化学的防御能の比較と内生微生物の分離により本植物が過放牧地で優占的に分布する要因に関する知見を得ることを目的とした。
放牧ストレスの強い場所、中程度に強い場所の2地点で採取した植物体を比較すると、強程度放牧圧地は中程度放牧圧地に比べ、生長量は小さく、栄養塩濃度は高く、総フェノール濃度、縮合タンニン濃度は高かった。栄養塩濃度の増加は補償的生長として、また、総フェノール濃度、縮合タンニン濃度の増加は化学的防御として、植物がストレスに対して反応している可能性が考えられた。また、根の内生微生物を分離した結果、強程度放牧圧地では栄養元素吸収促進能力を有するとの報告があるPhialocephala属糸状菌が、中程度放牧圧地では二次代謝産物の誘導能力を有するとの報告があるFusarium属糸状菌が有意に高頻度で確認された。本研究においてもこれらの内生微生物の機能がA. polyrhizumの生長や防御に影響を与えている可能性が推測された。