| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-110 (Poster presentation)

リョウブ葉内内生菌へのNi, Coの影響

*山口毅志,竹中千里 , 富岡利恵(名大院・生命農)

植物体内に病徴を示さず生息する内生菌は、根内で植物ホルモンやキレート物質の分泌による植物体への重金属耐性の付与が報告されているが、葉内での研究は少ない。リョウブ(Clethra barbinervis Sieb.et Zucc.)は日本各地に分布する樹木であり、特に蛇紋岩地帯や鉱山跡地などの重金属含有土壌で生育できる。また、樹体に重金属を高濃度に集積することが知られているが、生育土壌によって集積重金属が異なる。そのため、葉内内生菌への重金属の影響が異なることが考えられる。そこで本研究では、リョウブ葉内内生菌において、リョウブの重金属集積性が異なる2サイトでの種組成、重金属への耐性、物質生産能力を比較することでリョウブの重金属集積と内生菌の関係について知見を得ることを目的とした。愛知県新城市の蛇紋岩土壌で生育するリョウブは葉内にNiを高濃度に集積し(58.8±22.7 µg/g)、結晶片岩土壌のリョウブはCoを高濃度に集積していた(46.5±11.9 µg/g)。この葉からPDA培地に内生菌を分離し、種同定を行った。2サイトの各種においてリョウブ葉中濃度を参考に3, 30, 300 mg/lのNiまたはCoを添加した培地における菌糸の成長を観察した。また、物質生産能力として重金属耐性への関与の可能性があるシデロフォア生産とIAAの生産能力を調査した。2サイトで5種は共通していたが、異なる種が3種分離され、葉内に集積された重金属の種類の影響が考えられた。内生菌のいくつかの種はNiとCoの内、分離されたサイトのリョウブ葉内で高濃度だった重金属によって成長が抑制され、同種であってもNiとCoに異なる応答を示した。Colletotrichum属の内生菌はNiとCoに対して強い耐性を持ち、シデロフォア、IAAの生産が認められたため、リョウブ葉内で重金属耐性に働く可能性が示唆された。


日本生態学会