| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-172 (Poster presentation)

アカマツ母樹からの距離が実生の外生菌根菌群集に及ぼす影響

*丸山紗也可(三重大院・生資),松田陽介(三重大院・生資)

外生菌根菌(以下, 菌根菌)はマツ科やブナ科のような森林を構成する主要な樹木の細根に定着し, 外生菌根を形成する.実生における菌根菌の種構成は, 周辺の樹木に由来する菌糸や, 土壌中の埋土胞子に依存しており, 実生の定着した林齢とともに, 個々の樹木根系内における局所的な空間配置によっても変化する.したがって,攪乱後に生残した樹木に由来する実生の菌根菌種は母樹の有無やそこからの距離によって異なる可能性がある.しかし, 森林内で生じる人為攪乱が菌根菌の空間構造に及ぼす影響は明らかになっていない.そこで本研究は, 皆伐後の実生の成立にかかわる菌根菌の群集構造を明らかにするため, 母樹から異なる距離に生育する実生に定着する菌根菌の分類とその豊富さを調べた.調査地は三重県伊勢市内の約100年間は人手の入っていない天然性林であり, 2014年にアカマツ成木だけを残した約2 haの皆伐地である.調査地内でアカマツ母樹を5個体選び, それぞれを起点とした全長15 m, 幅1 mのライントランセクトを設定した.母樹から2.5 m ,5 m ,10 m ,15 m の地点でラインを区切り, 各区間内に生育するアカマツ実生を3から5個体, 合計98個体を採取した.採取した実生を実体顕微鏡下で観察し, 根端数を計数するとともに, 菌鞘の有無にもとづき, 各母樹における菌根形成率の割合を算出した.その結果, 採取した全実生から5,346個の根端を検鏡し, 菌根形成率は32%~100%であった.現在, 定着する菌根菌を分類群推定するため, ITS領域の解読を進めている.得られた配列は97%の相同性で分子操作的分類群(MOTUs)とし, アカマツ母樹からの距離における菌根菌の群集構造を解析する予定である.


日本生態学会