| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-173 (Poster presentation)
近年、健全な生態系の有する機能を防災・減災を活かす(Eco-DRR)という考えが脚光を浴びている。国際的な多くの場でその重要性や蓋然性が主張されているものの、生態系が災害抑止に供するメカニズムは不明瞭な点も多く、理論的説明や実証が期待されている。たとえば、海岸林は津波の強度を低減するのか否か、山地林が土砂災害の防備に資するのかについては一貫した傾向は見出されていない。このように単に緑ある景観が災害抑止に資するわけでなく、如何なるプロセスをもって生態系が災害に寄与しているのかを解明する必要がある。
本研究では、工学・林学的アプローチから植生との結付が認められている表層崩壊に着目し、樹木の多様性と災害強度の関係について解析した。その結果、多様性の低い地点においては抑止機能の大きさが二極化している一方で、多様性の高い地点では自然林の持つ(潜在的な)災害抑止効果が発揮されている可能性が示された。また、多様な樹種が存在することで機能的冗長性が増し、林齢がばらけることで安定性が上昇する可能性が示唆された。気候変動による極端気象の増加を勘案したうえで、過渡期にある林業、工学的なインフラに頼らない防災・減災へ向けて、求め行くべき生態系のあり方に対する一つの解を提案する。