| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-174 (Poster presentation)
東北地方では、野生の山菜・キノコ類の利用が盛んである。人々の食卓を賑わし、地域特有の食文化を支えるそれらの林産物は、供給・文化両面の性質を持つ重要な生態系サービスである。東北地方における山菜・野生キノコ類の供給と需要を決定している要因を解明するための基礎調査として、「道の駅」で販売される山菜・野生キノコ類の実態調査を行い、様々な環境・社会文化要因との関係を検証した。
東北地方と新潟県の道の駅100駅にて、店頭で販売されていた種の記録、店員へのヒアリングを行い、各道の駅で販売されていた山菜・野生キノコ類の種を調査した。道の駅ごとの山菜・キノコ類の販売種を説明する変数として、気候データ、植生データ、人口データ、道の駅の属性データを用いた。
調査した道の駅全体で計94種の山菜が販売されており、1地点の最高は38種だった。個別の山菜の販売の地理的分布を見ると、アザミ・シオデなどでは、特定の県への強い偏りが見られたが、他の多くの種では地理的な偏りは不明瞭であった。次に販売される山菜の多様性の地理的分布を見ると、秋田県と青森県南部地方で多様性が高い一方、岩手県、宮城県では低く、その多様性には大きな地域差が見られた。しかし、どの環境、社会文化的要因も販売される山菜の多様性と強い相関は示さなかった。各道の駅で販売されていた山菜の類似度をクラスター解析で可視化すると、特定の県・地域に対応したクラスターもある一方で、県に跨って広域に分布するクラスターもあり、販売される山菜には様々な要因が複合的に影響していることが示唆された。発表では、キノコ類の解析結果を追加し、また各種要因と販売される山菜・キノコ類の多様性・種構成の関係をより厳密に検証した結果を示す予定である。