| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-179 (Poster presentation)
近年、植林等で使用する種苗は遺伝的地域性を考慮する動向にある。一方で園芸等の分野では多様な要望への対応から、時として産地の不明な材料が使用され、異なる地域系統間での交雑が起こることが懸念される。また、サクラ属では植栽された園芸品種と野生種との交雑の報告もあり、野生種への他地域系統の遺伝子移入が園芸品種を介して引き起こされる可能性も否定できない。カンヒザクラは、花木として需要のある‘早咲きのサクラ品種’の多くの原種であると推定されている。カンヒザクラは中国、台湾、日本に生育するが、これらの地域間における遺伝的な違いは明らかにされていない。そこで本研究では、カンヒザクラ地域集団の遺伝的組成を明らかにするとともに、各地域集団と‘早咲きのサクラ品種’との関係を究明することを目的としてAFLP分析を行った。解析の結果、カンヒザクラの遺伝的組成は中国、台湾、日本の地域集団ごとに異なっていた。また、中国や台湾に生育する個体の中には日本の系統の遺伝子を保有すると思われるものが存在しており、遺伝子移入の可能性が示唆された。さらに日本の‘早咲きのサクラ品種’は、その大半が日本のカンヒザクラに由来すること、台湾の‘早咲きのサクラ品種’は、その大半が台湾のカンヒザクラに由来することが明らかになった。中国、台湾、日本のカンヒザクラやカンヒザクラに由来する品種は、各地域レベルで保全・管理をする必要があるだろう。