| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-192 (Poster presentation)

ネオニコチノイドの予期せぬ効果

*小橋 興次,森 美穂,早坂 大亮(近畿大院・農・環境管理)

日本の作付面積の半分以上を占める水田において,収量の安定化および農作物を害する生物防除のために農薬は使用されてきた.水田内で散布された農薬は,水を介して圃場内外に流出するため,防除対象種以外の生物に対しても大きな影響を及ぼす.なかでも,ネオニコチノイド系の農薬は,近年,その使用量が増加しており,当該系統剤のリスク評価は喫緊の課題となっている.さらに,本剤は,有効成分の実に80-98%が土壌中に残留することが報告されており(Sánchez-Bayo,2014),水系の生物のみならず土壌生態系への影響も懸念される.そこで本研究では,作用機作の異なるネオニコチノイド系農薬2剤(イミダクロプリドおよびジノテフラン)が,水中および土壌中の大型無脊椎動物に及ぼす影響について,水田メソコスム試験から明らかにした.イミダクロプリドの残留濃度は,投薬3日目以降,水中よりも土壌中で上昇する傾向にあった.他方,ジノテフランの残留濃度は,水中と土壌中で大きな差は見られなかった.曝露後の水質(濁度・pH・DO)には処理区間で大きな違いは見られなかった.水中および土壌中の大型無脊椎動物は合計で5目14種が確認された.多様度指数(H’)に処理区間で有意な差はみられなかった.農薬曝露後の大型無脊椎動物の個体数について解析したところ,無処理区とイミダクロプリド処理区との間に有意な差は認められなかったが,種レベルでみると,ショウジョウトンボの幼虫およびチビゲンゴロウがイミダクロプリド処理区で有意に減少した.一方,ジノテフラン処理区では無処理区と比べ,曝露後に大型無脊椎動物が2倍近く増加するなど,予期せぬ結果が得られた.ジノテフランはイミダクロプリドと比べ,生物に対する生態影響が相対的に小さい剤である可能性が示唆された.


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