| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-193 (Poster presentation)

森林管理により生物多様性はどのように変化するのか:国内既存文献の網羅的解析

*矢納早紀子(京大・森林生態),Rebecca Spake(University of Southampton),小野田雄介(京大・森林生態),北山兼弘(京大・森林生態)

日本の森林は、戦後の高度経済成長期における過利用による荒廃(第一の危機)を経て、現在、第二の危機を迎えていると言われている。第二の危機とは、人の手が加わることで維持されてきた、里山などに特有の生態系が、森林管理の放棄により失われることである。間伐や下草刈りといった森林管理により生物多様性がどのように変化するかについては、国内の各地において多くの事例研究がなされているが、全国的にどのような傾向があるのかを明らかにした研究はない。そこで本研究では、森林管理により植物や昆虫の多様性がどのように変化するかを、大局的な視点から明らかにするため、既存の文献資料を用いてメタ解析を行った。

森林管理の生物多様性への効果の大きさの指標として、種数と生物量に関して、効果量を以下の式により求め、間伐率や放置年数などの要因との関係性を調べた。収集した文献は42本、解析に用いた比較ペアの数は405であった。

【効果量】 = In (管理林における標本平均/非管理林における標本平均)

解析により、土壌撒きだし、下草刈り、間伐といった管理により二次林の種多様性が向上すること、また、管理時の林齢、管理からの放置年数、および間伐率が、管理による種多様性への効果の大きさと有意に相関していることが明らかとなった。これらの結果より、最も種多様性を向上させる間伐率は60%強であること、また、人工林に関しては、管理による種多様性への正の効果が、管理後4年間で大きく減少することなどが示唆された。さらに、この研究により研究知見の偏りも明らかになった:50%以上の強間伐施業における昆虫の種数の変化、および森林管理の長期(10年以上)にわたる効果に関する知見が特に不足している。


日本生態学会