| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-197 (Poster presentation)
アジア地域に代表される水田景観は,ため池や湿地の代替といった機能を通じて生物多様性の維持に重要な役割を果たしている.一方で,水田生物多様性はさまざまな人為の影響にさらされており,特に,農薬を含む人工合成化学物質による影響は甚大である.なかでも,近年使用量が増加しているネオニコチノイド系農薬がもたらす負の影響については多くの研究者が指摘していることから,本系統剤を含めた農薬の安全性についてより深い議論が必要である.日本における現行の農薬のリスクは,3種類の標準試験生物種を対象とした室内急性毒性試験にもとづき評価されている.その1種のオオミジンコは,個体サイズが大きく継代飼育が容易なことから,水生節足動物の代表種として用いられている.しかし,これらの評価は均一化された条件下における個体ベースの試験であるため,群集・生態系の評価や生物間の相互作用などの複雑系に対する考慮が充分に検討されているとは言い難い.そこで本研究では,水圏生態系における主要な生物グループである動物プランクトンに着目し,特に「群集」に対する農薬曝露の影響について,実験生態系試験から明らかにすることを目的とする.調査の結果,9種類の動物プランクトン(カイムシ類3種,カイアシ類2種,ミジンコ類4種)が確認された.曝露に対する群集の応答について解析した結果,無処理区と比べイミダクロプリド処理区で個体数の有意な減少が見られた.特に,優占度の高いカイムシ類において曝露に対する負の影響が顕著であった.他方,ジノテフランの曝露に対して,動物プランクトン群集は大きな影響を受けなかった.