| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-199 (Poster presentation)
近年、水系における生物相のモニタリング手法として、環境DNA手法が用いられるようになっている。この手法の登場によりモニタリングの時間的あるいは人員的コストは大幅に抑えられるようになったが、未だ課題も残されている。その一つとして、検出された環境DNAがどのタイミングで元の生物から放出されたものなのか分からないことが挙げられる。本研究では、マアジ(Trachurus japonicus)を対象種とし、まず水槽実験を通して、異なる長さのDNA断片間において時間経過に伴う分解率がどのように変化するかを調べた。その結果、環境DNAの分解率は、断片長の長い方が大きくなることが判明した。また、そうした断片長間における分解率の違いを利用して、2014年4月19日に舞鶴西湾の全47地点で採水されたサンプルにおけるマアジの環境DNAの放出後時間の推定を試みた。その結果、環境DNAの時間的な前後関係をある程度推定できることが分かった。また、魚群探知機によるエコー強度と環境DNA量の相関を見ると、長いDNA断片の方がエコー強度とより強く相関していることも分かった。本研究により、環境DNAに時間軸を与えられる可能性を示すことができた。将来的に研究がさらに発展すれば、生物の移動分散などにおける研究に大きく役立てることができるかもしれない。