| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-207 (Poster presentation)

本州中部におけるカラマツ人工林のコウモリ群集の特徴と周辺の植生が与える影響

*小松茉利奈(筑波大・生命環境科学),家根橋圭佑(東京大・農学生命科学研究科),中村大地(筑波大・生命環境科学),佐藤顕義(山梨県希少野生動植物種保護専門員),安井さち子(つくば市大角豆),上條隆志(筑波大・生命環境系)

コウモリは、種でねぐら利用や飛翔採餌活動に特徴があり、その特性を踏まえた森林・景観管理が保全に必要である。本研究は、カラマツ人工林の林分構造・周辺植生がコウモリ群集に与える影響を、上述の特性に考慮し評価することを目的とした。本州中部の日光地域および八ヶ岳地域のカラマツ人工林(LP)で捕獲調査を行い、捕獲した種をねぐらタイプ、飛翔空間タイプごとに類型した。林分構造の把握のために、捕獲地点の林内において半径10m円内の胸高直径(DBH)≧5cmの樹木の胸高断面積(BA)、最大DBH、立木密度(TD)を記録した。周辺植生については、調査地周辺半径0.5・1・2.5・5km内の自然林(NF)・二次林・LPの面積割合を求めた。林分構造および周辺植生が与える影響の評価のために、応答変数を捕獲数、説明変数をBA・カラマツ以外の樹種のBA・TD・最大DBH・NF・LPとする半径別のGLMMを作り、AICcに基づきモデル選択を行った。捕獲調査により、両地域のLPではニホンウサギコウモリが相対的に優占することが明らかとなった。解析の結果、総捕獲数および樹木棲型(樹木をねぐらとする種)はほとんどのスケールでBAが正、LPが負に選択された。林内飛翔型においても全体的にBAが正の効果を示した。ニホンウサギコウモリはNullモデルが最も良いモデルとされた一方で、BAが正の効果を示す傾向があった。BAが正の要因として選択される傾向が強いことから、発達したカラマツ人工林が生息環境として適していると考えられる。しかしその一方で、LPは負に作用したため、カラマツ人工林が広がる景観は生息環境として不適であることが示唆された。


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