| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-212 (Poster presentation)
枯死木依存性甲虫とは、生活環において枯死木に依存している甲虫のことを指す。その中で材を摂食するものの中には難分解の木質を分解・資化できるものがおり、森林の物質循環において重要な役割を担っている。
しかし、都市部において発生してきた都市型の孤立林は、その面積や環境の均一性、安全管理の活動などから生物多様性が衰退することが知られており、もし枯死木依存性甲虫の多様性や群集構造に影響を与えていた場合、林内の物質循環などに影響を与えることが考えられる。
本研究では、雑木林と照葉樹林のような人為的な管理の有無や周辺の土地利用景観、森林面積などが異なる調査地において、枯死木依存性甲虫群集を中心に、樹皮下や腐朽の進んだ材に出現し、また枯死木依存性甲虫と共に生活することもある周辺の地表性甲虫群集も含めて調査を行うことで、人為的な管理や面積の縮小が群集に及ぼす影響を評価する。
枯死木依存性甲虫群集はシイタケのほだ木を設置してトラップとすると共に、林床の自然の腐朽材をサンプルし、その中の動物群集(甲虫の捕食者となりうる多足類も含む)を調査した。また、ピットフォールやバナナトラップによる収集も行った。
ピットフォールトラップによる調査では人為的管理の有無に関わらず都市部の小面積、中面積の森林でサンプリングされる甲虫の種、機能群に偏りが見られた。また、都市部の森林で優先種となる甲虫はオオヒラタシデムシやセンチコガネなど腐食性のものであり、タヌキやカラスなどからの食物供給による高密度化の影響が予想される。バナナトラップによるサンプリングでは、人為的管理のある森林で種数も個体数も多くサンプリングされた。
以上から、森林の甲虫は都市化に伴う面積の減少や人為的な管理など森林の特性により種組成が変化し,里山や都市林に多い種の存在が示唆された。