| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-214 (Poster presentation)
生態系における生物間の物質のやりとりの大部分は、捕食-被食関係を通じて行われる。特定の生態系における、捕食-被食関係を描いたネットワークを食物網と呼ぶ。食物網の構造を理解することは、群集〜生態系生態学における重要な課題である。
食物網の基底生物はほとんどの場合、光合成生産者もしくは腐食消費者であり、これらの生物がどれくらいの物質を生産できるかによって食物網内部を流れる物質の量がきまる。食物網の内部には基底種を食べる一次消費者、さらにそれを食べるさらにそれを利用する二次消費者というように階層構造があり、この階層のことを栄養段階と呼ぶ。
生態系生態学では、栄養段階が明確に区別されるリニアな食物連鎖系をモデルとして生態系を捉えてきた、しかし、群集生態学におけるモデルである食物網では様相が異なる。食物網には異なる栄養段階間の生物を消費する雑食者が存在し、多くの生物種は複数の栄養段階に属しているためである。Trophic unfoldingという食物網解析手法を使って個々の生物種を複数の栄養段階に振り分けることで、食物網をリニアな食物連鎖系に変換できる。
生物は受け取った物質の大部分を呼吸や自然死亡などで食物網外へ排出するため、より高次の生物へ流れる物質の量は少なくなる。食物網の栄養段階間、もしくは生物間の物質の受け渡し効率を栄養転換効率と呼ぶ。本研究の目的はTrophic unfoldingを利用して、種レベルの栄養転換効率と、食物網の栄養段階レベルの栄養転換効率を21の水域食物網で比較することである。この解析から2種類の栄養転換効率がそれぞれ栄養位置と栄養段階へどのように変化するかを比較した。また、それぞれの違いが生態系のどのような特徴を反映しているのかについて検討する。