| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-215 (Poster presentation)

魚で調べる島嶼生態学

*平拓也(東北大・生命), 大槻潮(東北大院・生命), 占部城太郎(東北大院・生命)

寄生虫群集は、宿主を一つの「島」とみなすことにより島嶼生態学のような生態学研究のためのモデルシステムとして用いる事ができると考えられる。また、魚類の寄生虫は水産業において世界中で経済的損失を生じさせることがわかっており、その駆除やコントロールのために生態の研究が必要とされている。しかしながら、魚類の寄生虫を生態学的視点から研究した例は極めて稀である。

一般に、すべての状況が同じであれば、島嶼生態学が示唆するように、宿主体サイズが大きいほど寄生者の遭遇頻度は高く定着数も多いと期待される。そこで、魚類の一般的な寄生虫で取り扱いの容易なエクトパラサイト(外部寄生虫)であるウオジラミ科寄生虫を対象に、「宿主あたりのウオジラミの個体数は宿主となる魚類の種に関わらず体サイズに伴って増加する」という仮説をたてて検証を行った。

宿主魚類の採集は日本各地の臨海実験所を中心に10箇所において、釣りを用いて行った。釣りを用いたのは網を使った場合体表が擦られることで外部寄生虫が剥がれる恐れがあると考えたためである。得られた魚類は標準体長を測定した後、体表に寄生していたウオジラミ科寄生虫を濾過海水によるすすぎとルーペを用いた目視観察により採集した。解析に用いた宿主魚種は主に岩礁域を生息場所としている魚種で、アイナメ、クジメ、カサゴ、ホシササノハベラ等である。解析には一般化線形混合モデルを用い、応答変数は寄生虫の個体数、説明変数は固定要因して宿主体サイズの他に生息場所と分布域水温をランダム要因として宿主種と採集時期を設定した。この他、ウオジラミ科寄生虫の宿主当たりの種豊度についても同様の解析を行った。それら結果から仮説を検証するとともに、宿主あたりの寄生者数を決める要因について議論を深めたい。


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