| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-219 (Poster presentation)

河川に生息するトンボ目幼虫の微生息場所を規定する要因

*高良真佑子,河内香織(近畿大・農)

トンボ目(Odonata)は生活環における水中依存期間が長いため、生息環境とは卵期と幼虫期を過ごす水環境を指すことが多い。しかし先行研究は幼虫よりも観察や同定が容易であり、陸上からも目視や捕獲による個体数データ収集が可能である成虫を対象とした研究が多く、個々の種の幼虫期の生活史についてはほとんどわかっていないのが現状である。本研究では特に流水域の河川構造との関連性に着目し、流水域におけるトンボ目幼虫の生息場所選択の決定要因を明らかにすることを目的とした。

60cm水槽を用いて飼育試験を行った。水深20cmの流水環境で水槽全体を覆うようにヨシの根を設置し、ハグロトンボ(Calopteryx atrata)終齢幼虫10個体をいれて各個体がみられた場所の水深と流速を測定した。また、幼虫の位置が根の上下どちらであったかを記録した。2015年10月に、奈良県内を流れる淀川水系木津川支川である布目川において野外調査を行った。一辺40cm×40cmの枠を微生息場所の基本単位1地点とし、地点ごとに水深,流速,照度と、植生,カバー被度,水中の植物体,河床材料の割合を計測したのち、タモ網を用いて生物を採取した。採取した生物はエタノールで保存したのちにソーティング,同定した。

飼育試験から、流速16cm/sec以下の場所に多くいる傾向がみられ、根の上側より下側に有意に多くみられた。野外調査の結果、60地点のうち21地点においてトンボ目幼虫6種62個体が確認された。1地点においてトンボ目幼虫が最大で3種確認されたことから、本研究の基本単位であれば複数種の微生息場所を同時に調査することが可能であるとともに、より詳細に幼虫の微生息場所を特定する必要性があることも考えられた。また、魚類や他の水生昆虫類の個体数密度が高かったため、捕食者や餌資源となる被食者の存在が微生息場所の選好性に影響している可能性がある。


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