| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-220 (Poster presentation)

摂餌選択性からみたトンボ幼生の栄養ニッチ重複度〜深泥池を例に〜

山田紗友美*(東北大 院 生命),加藤義和(総合地球環境学研究所),辻野亮(奈良教育大),竹門康弘(京大 防災研),占部城太郎(東北大 院 生命)

複数の近縁種個体群の同所的共存には、生息場所や食物などに関するニッチ重複度が小さいことが必要とされているが、その実態についてはよくわかっていない。トンボ幼虫は、頭サイズと餌生物の大きさに相関があるものの、種に関わらず似た餌の選好性を持つと言われている。トンボ幼虫に関するこれまでの研究では、種内での共食いや餌をめぐる種間競争の存在が実験等により報告されているが、野外で複数種が生息している場合の各種の生息場所の選好性や種間での餌の重複度は不明な点が多い。

深泥池の浮島内の湿地では、水深が浅く天敵が少ないため、トンボ類の幼虫が豊富に生息している。浮島でのトンボ幼虫の生息密度が環境収容力に対して飽和であれば、競争などの生物間相互作用は強くなるので、種間で棲み分け(異なる微環境を選好)や食い分け(異なる餌を食べる)が生じている可能性が高い。そこで、2014年5~10月、2015年の6~10月に浮島内の植生が異なる複数の地点で、トンボ幼虫とその潜在的な餌生物(底生動物とプランクトン)を定量採集し、出現頻度と消化管内容物の解析を行なった。具体的には、食性の類似度をBray-Curtis 指数を用いて計算し、出現するトンボ幼虫の生物量との関係を調べた。調査の結果、トンボ幼虫としてトンボ科8種、ヤンマ科2種、エゾトンボ科1種、イトトンボ科4種、アオイトトンボ科1種の計848個体が採集された。このうち、出現個体数が多く、出現地点の重なりが多かった4種を対象に解析をおこなったところ、各2種間で比較した場合、生物量が拮抗する場所では異なる餌を食べている場合や、逆に同じ餌を食べている場合などがみられた。これら結果について考察し、トンボ幼虫の同所的共存機構について理解を深めたい。


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