| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-003 (Poster presentation)

北スマトラ・レウサー山国立公園の植生

*鈴木英治(鹿大理工), 河原大基(鹿大理工),Bayu Arief Pratama(RCB-LIPI), Kusma Rahmawati(RCB-LIPI)

熱帯低地林はスマトラから急速に失われつつあるが、アチェ州から北スマトラ州にまたがるレウサー山国立公園にはまだ低地フタバガキ林が残っている。しかしその植生はほとんど研究されていないので、同国立公園内にあるタンカハン地区の森林調査を2013年に続き2014年にも行った。2013年の調査結果は昨年の生態学会で報告したが、今回はその結果と比較しながら、2014年の調査結果を報告する。

2015年11月にタンカハン地区のゴアカンビン周辺で0.5haの調査区L3を標高320m北緯3°43’,東経98°3’の地点に設定し、幹周囲15cm以上の樹木について、種名、位置、幹周囲長を調べた。そして昨年度調べた各1haのL1、L2の調査区と比較した。

3つの調査区ともフタバガキ科が優占していたが、L1,L2,L3の順に国立公園の境界から遠ざかり、違法伐採の痕跡を示す切り株も少なくなった。調査区内の最大DBHはL1で79cm、L2で139cm、L3で147cmであり、公園内部の調査区ほど樹木が大きくなった。胸高断面積合計も同じ傾向だった。しかし、樹種の種多様性は、L3でFisherのαが54しかなく、84のL1や、127のL2より低かった。これは人為以外の環境要因の影響によると考えられるが、L3付近は湿地性の樹種であるトウダイグサ科のAgrostistachis sessilifolia等が多く出現したことから、土壌が過湿傾向にあるために多様性が低くなっていると考えられた。このような地域としての土壌の多様性は、公園全体としての多様性を高める働きをしている。


日本生態学会