| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-006 (Poster presentation)

森林における樹木の光獲得効率と光利用効率の関係:異なる気候帯で比較する

小野田雄介(京大・農),市栄智明(高知大・農),田中憲蔵(森林総研),中川弥智子(名大・生命農),阿久津公祐(北大・地球環境),相場慎一郎(鹿大・理工),日浦勉(北大・北方生物圏FSC)

樹木の高さは、1つの森林内でも様々であり、また異なる環境では、森林の最大高も大きく異なる。背丈が高い木は、上から差し込む光を先取りし、背丈の低い木を被陰し成長を抑制することができる(一方向競争)が、その一方で、高さに伴うコストも有する。本研究は、熱帯、暖温帯、冷温帯に成立する3つの成熟林を比較し、光を巡る競争の視点から、森林の高さ構造を統一的に明らかにすることを目的とする。光の三次元分布、樹冠計測、非破壊的成長速度の測定を行い、共存している樹木の光獲得効率(バイオマスあたりの光獲得量)と光利用効率(獲得した光をバイオマスに転換する効率)を比較した。各森林内では、共通して、背丈が高い木ほど、光獲得効率は高く、逆に光利用効率は低くなる傾向があったが、両者の積である相対成長速度は、樹高に依存しなかった。また森林間の比較では、熱帯ほど日射量が多いが、それに伴って、地上部投資も増えるため、光獲得効率と光利用効率は森林間でほとんど変わらなかった。これらの結果は、恵まれた環境ほど、光を巡る競争のために多大なコストを払っており、その結果、光獲得効率と光利用効率のトレードオフを介して相対成長速度が収斂していることを示唆する。


日本生態学会