| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-007 (Poster presentation)
雪食地形は、豪雪地帯の山の斜面に形成される特有な自然景観であり、斜面やその下部に位置する谷底面などの周辺生態系に様々な影響を与えている。
本研究では、雪食地形が卓越する福島県只見町において、雪食地形の分布に伴った渓畔林の種組成の変化や要因を明らかにした。調査は只見町の8流域において、渓畔林が発達している谷底面にそれぞれ15m×15mの調査区を計32設置し毎木調査を行った。また、GISや空中写真より、雪食地形の抽出を行い、雪食地形と地質・気候などの関係を調べた。
8流域は雪食地形が非常に多い流域、ほとんど見られない流域、その中間の3つに区分された。また32調査区の種組成をクラスター分析した結果、林冠木がブナによって覆われている渓畔林(A群)、ブナに加えサワグルミの優占度も高い渓畔林(B群)、ブナの出現頻度が低く、サワグルミやトチノキ等が高頻度で出現する渓畔林(C群)の3つに区分された。C群は只見以外でもよく見られる典型的な日本海型渓畔林である。
これら3群の渓畔林と雪食地形や地質、積雪との関係性を調べた結果、C群は只見全体に多く分布したが、A群は雪食地形が見られる地域で特に積雪が多い地域に多く、B群は雪食地形があまり分布しない地域に多かった。このように雪食地形の分布傾度によって谷底面に形成される渓畔林の種組成は異なっていた。
種数を比較した結果、高木層のみでは各流域で有意な差はないが、低木層も含めると雪食地形の多い流域で有意に種数が多かった。
これらより、只見では複雑な地質や豪雪などの特異的な環境が、雪食地形を含む様々なモザイク景観を作り出し、只見だけでも様々なタイプの渓畔林が見られることから、雪食地形は渓畔林のβ多様性を高めるのに貢献すると考えられた。