| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-009 (Poster presentation)

樹木群集における形質-優占度関係の気温勾配・遷移段階に沿った変化

*饗庭正寛(東北大・生命科学),黒川紘子(森林総研),小野田雄介(京大・農),正木隆(森林総研),中静透(東北大・生命科学)

樹木群集において、各構成種の相対優占度を決定している要因はよくわかっていない。樹木の生態学的な性質は機能形質によって決定されるため、相対優占度も少なくとも部分的には機能形質によって決定されていると考えられるが、大規模な研究例はこれまでなかった。本研究では、森林生態系多様性基礎調査のデータを活用して、形質-優占度関係の気温勾配・遷移段階に沿った変化を解析した。

最大樹高、面積あたり葉重量 (LMA)、種子重、材密度、個葉面積の5つの形質それぞれについて、平均と機能的多様性を計算し、年平均気温と遷移段階を説明変数として加法モデルでモデル化した。重み付けしない場合、個体数で重み付けした場合、合計断面積で重み付けした場合の3通りの結果を比較することにより、形質と局所群集内における相対優占度の関係を検証した。

その結果、樹高が高い種、LMAが大きい種、種子が大きい種、葉が小さい種ほど相対優占度が有意に大きい傾向が広い温度域・遷移段階で見られた。この傾向は個体数・合計断面積に共通して見られたが、合計断面積においてより強かった。一方、機能的多様性の解析結果は、優占種の形質が互いに有意に類似する場合も、異なる場合も存在することを示した。年平均気温に伴う平均形質値・機能的多様性の変化は主に種構成により決定されていた。一方、遷移段階に伴う平均形質値・機能的多様性の変化には、種構成・優占度の双方が重要であった。

この結果は、これらの形質が樹木の相対優占度の重要な決定要因であることを強く示唆するとともに、森林の生態系機能・サービス評価において形質情報を活用する際に、相対優占度の考慮が不可欠であることを示している。


日本生態学会