| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-011 (Poster presentation)
海洋島に残る天然林は多くの固有種の生育地であり,世界で最も脅威にさらされているホットスポット生態系の一つである.小笠原諸島母島の石門地域は隆起石灰岩からなり,過去に皆伐等の破壊的な人為的攪乱を受けていない湿性高木林が広がっている.この森林に4 haの毎木調査プロットを設置し,維管束植物の種多様性,群集構造,外来植物の侵入状況などを調査した.胸高断面積合計で最も優占していたのは亜高木種のモクタチバナであり,次いでウドノキ,シマホルトノキであった.外来樹種のアカギは胸高断面積合計で4番目,幹数(DBH 10 cm以上)で3番目に多く,隣接する植栽地を中心に広がっていた.維管束植物は109種,DBH 10 cm以上の樹木は37種が確認された.樹木の多様性は他の海洋島の森林と比較して低く,幹数や胸高断面積合計は大きかった.台風による撹乱後の林床ではアカギ以外にもシマグワやセイロンベンケイ,パパイヤ等の外来植物が高頻度で確認され,自然撹乱によるギャップ形成に乗じて外来植物が定着・優占しつつあることが明らかになった.種数面積関係より算出した推定種数によると,石門湿性高木林は小笠原諸島全体のフロラの約30%,固有種の約60%の種の生育地となっており,実際に36%の絶滅危惧種が4 haプロット内に確認された.このことから石門の湿性高木林はアカギの侵入が進んでいるものの依然として優先順位の高い保全対象地域であることが示唆された.現在,石門ではアカギの駆除が進行中であるが,その他の外来植物の対策も検討する必要がある.