| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-013 (Poster presentation)
管理放棄年代が異なる半自然草原の種組成を調べることで、管理放棄による草原生植物の消失のしやすさを評価することを試みた。島根県三瓶山の東の原において、現在まで年数回の草刈り(管理区)が継続されている調査区に加え、約5年間放棄(5年区)・約10年間放棄(10年区)・40年以上放棄(40年区)の放棄年代が異なる3調査区を設定した。これらの調査区は互いに隣接し、放棄される以前は放牧と草刈りによって管理されていた。それぞれの調査区内において10m×10mの枠に出現した樹木の胸高直径を測った。また、各調査区で1m×1mの調査枠を35個ずつ設置し、出現した植物の名前を記録した。
樹木の調査の結果、管理区では胸高以上の樹木はなく、8年区ではススキが優占する草原であったが、胸高以上のクリやイヌシデの進入が見られた。15年区はヌルデやヤマザクラなどが優占する低木林であった。40年区は、クリやイヌシデが優占する二次林であった。各調査区における1m×1m枠の植物の出現頻度から、草原生植物の出現パターンを類型化した。シラヤマギク、ヤマハッカなどは管理区での出現頻度が高く、管理放棄年数の増加に伴い出現頻度が少しずつ低下した。チガヤやニガナ、ツリガネニンジンなどは、管理区で出現頻度が高く、管理放棄に伴って急激に出現頻度が低下した。スズサイコやヤマラッキョウ、アキカラマツなどは管理区でも出現頻度は中程度以下で、管理放棄に伴う出現頻度の低下は穏やかだった。これらのデータから、管理放棄に伴う草原生植物の消失しやすさとその要因について考察する。