| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-014 (Poster presentation)
山陰海岸東部の砂質海岸において,砂浜・砂丘植生の成帯構造と希少海浜植物の出現位置を明らかにするために,ベルトトランセクト調査を行った.
計7ヶ所の砂質海岸を調査地として選定し,各調査地で1-2本のラインを汀線から内陸に向け設置した(計10本).ライン中央に沿って2×2 mのコドラートを連続的に設置して植生調査を行い,10 m間隔で水準測量を行った.得られた計287の植生調査資料(無植生のものを除く)を対象にTWINSPANによる群落分類を行い,群落間で汀線からの距離や植生構造を比較した.
TWINSPANの第一分割により,植生調査資料はハマゴウ,ハマボウフウなど主として海浜植物からなる群落Aと,ハイネズのほか,チガヤ,ヘクソカズラといった内陸植物を多く含む群落Bに分類された.また第二分割により,群落Aはハマヒルガオ,コウボウムギなど草本のみからなる群落A-Iと,ハマゴウなど矮小低木を含む群落A-IIに分類された.また群落Bはチガヤ,ハイネズなどを含む群落B-Iと,ツリガネニンジン,クロマツなどを含む群落B-IIに分類された.汀線からの距離,海面からの比高,植被率,内陸植物の累積植被率はA-I<A-II<B(B-IとB-II)の順に大きかった.これらの結果から,調査地の砂浜・砂丘植生は,汀線から内陸にA-I,A-II,Bと配列する成帯構造をもつことがわかった.
海浜植物のうち国あるいは県レベルで絶滅危惧にある種に着目すると,スナビキソウがA-I,イソスミレやハマウツボがA-II,ナミキソウがB-IIに含まれるなど,それぞれの出現位置は異なっていた.希少海浜植物全体の保全には成帯構造の維持が不可欠であり,その単純化を引き起こす内陸側の開発や海岸浸食は大きな負の影響を及ぼすことが示唆された.