| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-019 (Poster presentation)
極限環境に生育する高山生態系は脆弱であり,温暖化や酸性雨の影響が顕著に現れると言われ,将来性が危惧されている.また近年は,後立山連峰においてもシカの影響に対する懸念も出てきた.今後の高山植生の動向を予測するためにも,高山植生の成立とその立地条件を明らかにすることは喫緊の課題である.そこで本研究では,多様な高山植生が成立する後立山連峰において,それぞれの植生と環境要因との関係を明らかにすることを目的とした.
確認された風衝草原(CK),風衝矮性低木群落(LV),高山荒原(DS),広葉草原(TR),雪田植生(PH),亜高山性針葉樹匍匐木林(VP)の立地条件は,CKとLVはより高標高域に,斜面方位は,西,北西,北側に成立する傾向が見られた.PHはより低標高域に,斜面傾斜は比較的緩く,平坦地から凹型の斜面に成立する傾向がみられた.PHとTRの成立する斜面方位は北東,東,南東斜面の割合が高かった.DSとVPが成立する標高,斜面傾斜,斜面方位,斜面型には傾向がみられなかった.6タイプの植生と基質との間に有意な関係はなかった.回帰木から算出した分離貢献度の値は,標高が最も大きく,以下,斜面方位,曲率,斜面傾斜であった.回帰木の結果では,VPとLVの立地条件の違いは説明できなかった.
今回のデータセットでVPとLVの立地条件の違いが説明できなかった要因としては,超塩基性という蛇紋岩地群落の成立要因の特異性が他の植物群落と異なった傾向を示したことが原因だと考えられる.VPの成立には,先行研究より,尾根からの距離が影響していることが考えられる.今後は,稜線からの距離を説明に加えること,またクラスレベルだけではなく群集・群落レベルでの解析を進めることで,より高山植生の広域的な分布を明らかにしていけるのではないかと考えている.