| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-022 (Poster presentation)
カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の穿入を受けたブナ科樹木が枯死する被害、ナラ枯れが1980年代以降急速に拡大している。カシナガは繁殖を行うために、ブナ科樹木に穿入し集合フェロモンを発生する。周辺のカシナガ成虫は集合フェロモンにひきつけられ、その樹木に集中して穿入する集中攻撃(マスアタック)を行う。これによって枯死が起こり、ナラ枯れが引き起こされる。本研究ではこのナラ枯れについて、格子確率モデルを用いた解析を行った。その際、集合フェロモンの有効範囲と樹木の密度を変えることでカシナガの穿入度合いがどのように変化するかを調べるために、格子モデルによるシミュレーション実験を行った。モデルは100×100マスの格子上に樹木(200〜1000本)と、カシナガ(5000個体)をランダムに配置し、時間とともにカシナガは移動を行い、移動先が樹木だった場合穿入が起こる。穿入がおこると、穿入された樹木を中心に集合フェロモンが発散され、そのフェロモンの有効範囲内(1〜10マス)に存在するカシナガ個体は樹木の方に向かって移動し、存在しない個体はランダムに移動する。樹木の穿入数がある一定の閾値を超えると枯死に至り、集合フェロモンの発散は収束する。コンピューターシミュレーションによって実験を行った結果、樹木本数が200本の時、集合フェロモンの有効範囲が広がるほど枯死率が上がり、400本以上の時集合フェロモンの有効範囲が広がるほど枯死率が下がった。カシナガ個体数の初期値に対して樹木が少ない場合は、樹木同士が離れていても、集合フェロモンによってそれぞれの樹木がカシナガを集めることができるので枯死率が上がり、初期値に対して樹木が多い場合は、樹木同士が密集している方が1本枯死して集合フェロモンが終息しても、まだ発散している樹木が近くにあるのでその樹木に穿入することがわかった。