| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-025 (Poster presentation)
アフリカ大型類人猿の主要な食物は、果実・葉・地上性草本であり、それらの餌資源の分布は大型類人猿の生態を決める主要因の一つと考えられる。しかし、熱帯林で大型類人猿の広大な行動圏内の植生情報を明らかにすることは容易ではなく、大型類人猿の行動観察が進む一方で、餌資源分布の定量化は遅れている。特に、地上性草本の分布や、それが大型類人猿の行動に与える影響についての研究は少ない。地上性草本の分布は、森林の樹種構成や遷移ステージによって決定される局所的な生育環境に基づいていることが予想される。本研究では、ボノボ(Pan Paniscus)の長期調査地であるコンゴ民主共和国ワンバ調査地において、植生調査を行い、樹種構成によって森林タイプを区分し、区分ごとの地上性草本の種構成及び利用可能量を調べた。植生調査は、50プロットにおいて、胸高直径30cm以上の樹木の樹種と胸高直径、草本の被度と高さを各々記録した。結果、プロット内の樹木の優占樹種によって、非浸水林が5分類、浸水林が2分類に区分された。草本の生育状況はこれらの分類ごとに異なり、非浸水林ではクズウコン科が、浸水林ではヤシ科が優占し、ツユクサ科は双方に出現した。非浸水林のうち、Uapaca guineensisとパイオニア種であるMusanga cecropioidesが優先する森林区分において草本量が多かった。これは、倒木ギャップにより、草本が生育しやすい環境が生じているためと考えられる。ワンバでは、草本の中で大型類人猿の主要な食物と知られているクズウコン科は豊富である一方、同じく主要な食物であるショウガ科は少なかった。今後、森林区分ごとに草本と果実を合わせた餌資源量の特徴を分析し、森林区分を衛星画像での区分と一致させることで面的に外挿し、餌資源量の空間的な評価につなげることが必要と考える。