| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-035 (Poster presentation)
移動性のない植物は、葉を硬くするといったさまざまな防衛形質により被食を防いでいる。一方、植食者による「見つかりやすさ」も植物の被食率や防衛戦略に影響すると考えられてきた。一般に、大きかったり個体数が多かったりする種は「見つかりやすい」ため、さまざまな植食者(特にジェネラリスト)に食べられやすい。逆に、小さかったり個体数が少なかったりする種は「見つかりにくい」ため、ジェネラリストには食べられにくいとされる。しかしこの仮説は、同所的に共存している幅広い樹種を対象に防衛形質も考慮して調べられた例はほとんどない。さらに、同樹種内でも成木と稚樹では個体数や被食のダメージが異なるため、被食量、個体数、形質の関係は異なる可能性がある。そこで本研究では、小川群落保護林に設置された6haプロットに出現する落葉樹のほぼ全種である56種1亜種を対象に、1)被食率は成木と稚樹で異なるか、2)個体群密度と被食率にどのような関係があるか、またその関係は成木と稚樹で異なるかを、防衛形質を考慮した上で検証した。その結果、形質が同じなら成木の葉の方が食べられやすく、稚樹のときに食べられやすい葉をもつ種は成木になっても食べられやすいことがわかった。このことは、成木の葉の方が植食者にとって見つけやすい資源である可能性を示している。また、稚樹・成木ともに個体群密度が低い種の方が食べられやすかった。以上から、植食者側の種組成も考慮する必要があるが、個体群密度の低い種を特異的に被食する植食者の個体数が多いことや、さらに被食率の高い種は個体数を増やせない可能性も考えられた。