| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-039 (Poster presentation)

サイチョウ類が散布する樹木センダン科Aglaia spectabilisの15年間の個体群動態

*北村俊平(石川県立大), Pilai POONSWAD(マヒドン大)

タイ王国カオヤイ国立公園の熱帯季節林で最大級の種子をもつセンダン科Aglaia spectabilis(アグライア)は、大型の果実食鳥類サイチョウ類が主な種子散布者である。本研究では、アグライアの種子散布後の運命を追跡するため、カオヤイ国立公園の熱帯季節林内に設定した4haの調査区において、2000年8月に番号札を用いてアグライアの全数調査を行った。またDBHが10cm以上の樹種を対象とした毎木調査を行った。調査区を10×10mの400個の方形区とし、各方形区内でアグライアの位置と高さを記録した。8m以下の個体については、地表10cmの直径、葉の枚数、葉の食害の程度、周囲1m2以内に出現した他個体の幹数を記録した。8mを超える個体については、周囲長を記録した。各方形区の中央で全天写真を撮影し、開空度を算出した。2001年の散布種子に由来する当年生実生の調査を2002年1月に行った。

DBH10cm以上の樹種は105種1,610個体で、アグライアは27個体だった。アグライアの全数調査で1007個体を個体識別し、当年生実生は2000年由来が19個体、2001年由来が36個体、結実個体は4個体だった。結実個体から50m以上離れた地点にも当年生実生が複数確認され、これらは自然落下やげっ歯類による貯食散布ではなく、サイチョウ類に種子散布された可能性が高いと考えられた。2014年12月と2015年12月にアグライアの再調査を行い、354個体の生存が確認された。当年生実生55個体のうち、2015年12月に生存が確認されたのは、2000年が0個体、2001年が9個体だった。2001年由来の個体の平均樹高は104cmで、平均76cm成長していた。当日の発表では、再調査で確認された生存個体を対象としたさらに詳細な解析結果について紹介する。


日本生態学会