| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-041 (Poster presentation)
保全対象種において,観測された遺伝的多様性や遺伝的構造の形成過程を理解することは,保全戦略をたてる上で重要である。本研究では三重県に孤立して分布する全てのシデコブシ585個体(21個体以上の6集団と6個体以下の7孤立木サイト)を研究対象とし,核と葉緑体のマイクロサテライト遺伝子型を決定した。STRUCTURE解析の結果,3つの遺伝的クラスターが検出され,コアレセント解析の結果,3遺伝的クラスター間の最も古い分岐は25世代以内と推定された。従って,本研究で検出された集団構造は比較的最近,人為的影響により形成されたと考えられる。有意な最近の移住は6集団間中1集団間のみで検出されたため,ほとんどの集団は現在孤立した状況にあると考えられる。これら6集団の将来の遺伝的多様性を予測したところ,繁殖力のばらつきを考慮に入れたシナリオでは,基準シナリオに比べ2倍以上速く遺伝的多様性が減少した。一方,近接集団間の移住を考慮したシナリオでは,遺伝的多様性の減少は著しく改善された。これらの予測結果から,1)繁殖力のばらつきを減らすために生育地の環境を改善し有性繁殖を促進させることと,2)集団間の移住を促進させるために,残存集団間に点在する移住の際の飛び石となることが期待される孤立木サイトや絶滅集団を再生させることが保全策として有効であると考えられた。