| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042 (Poster presentation)

石鎚山のシコクシラベ集団から採種した次世代の遺伝的多様性

*岩泉正和, 笹島芳信, 河合慶恵(森林総研林育セ関西), 磯田圭哉(森林総研林育セ), 那須仁弥(森林総研林育セ), 大谷雅人(兵庫県立大・自然研)

シコクシラベ(Abies veitchii var. shikokiana)は四国の石鎚山、笹ヶ峰及び剣山の頂上周辺にのみ遺存的に生育するシラベの固有変種であるが、気候変動等による集団サイズの減少が危惧されており、遺伝的変異の保全が重要視されている。本研究では、当該樹種の集団内での遺伝的多様性の維持機構を明らかにし、集団毎の保全方法の確立に資するため、石鎚山集団内の複数母樹から採種した次世代(種子)の遺伝的多様性を評価するとともに、その成木集団との違い、家系間での違いやその要因について解析した。

集団内から選定した成木(115個体)と、そのうち21母樹から結実年である2011年に得られた種子(母樹あたり24個、計504個)を対象に、他のモミ属樹種で開発された核SSRマーカー6座を用いて遺伝子型を決定した。成木および各種子家系についてallelic richness等の統計量の算出や他殖率の推定を行い、母樹の分布傾向や個体サイズ等との関係について解析した。

遺伝的多様性は、全体的には種子が成木よりも低かった。このことは、繁殖に実際に寄与している成木の個体数が少ないことを反映した可能性がある。さらに、遺伝的多様性は種子家系間でも違いが見られた。種子の遺伝的多様性や他殖率が高い母樹は空間的にまとまって分布していたほか、母樹の個体サイズが小さいほどそれらの統計量が高い傾向が認められた。これらの結果から、種子の遺伝的多様性は成木の個体密度や齢級等にも影響されていることが示唆された。今後は他の繁殖年次に得られた種子についても分析し、年次間の遺伝的異質性が多様性に与える影響や寄与についても評価していく考えである。


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