| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-044 (Poster presentation)
テリハボクはタンザニア周辺、インド、東南アジア、太平洋諸島、オーストラリア、日本の沖縄など、亜熱帯の海岸域に広く分布する。種子を海流によって分散させる海流散布植物であり、長距離の遺伝子流動が成立し得ると考えられ、広域にわたる遺伝子流動の規模やその結果としての遺伝構造は興味深い。本研究では、調査範囲をソロモンからバヌアツ、フィジー、トンガまでの約3000kmの範囲から試料を収集し、テリハボク島嶼集団における遺伝的多様性や遺伝構造について明らかにすることを目的とした。
EST-SSR11遺伝子座の遺伝子型を同定した結果、遺伝的多様性(Allelic richness)は東端のトンガでやや低い傾向にあった。また、Structure解析では、K=2が採択され、西寄りのソロモン、バヌアツと東のトンガとの間では優先するクラスターが明瞭に異なり、フィジーで両方のクラスターが同程度となる地理的構造が見られた。島間のペアワイズFstにより評価した遺伝的分化は、台湾と沖縄の解析で得られてきた分化(Hanaoka et. al. 2014; Ann. For. Sci. 71: 575-584)と同程度であった。これらのことから、テリハボクは3000km以上の広域の島集団間であっても遺伝的な分化は小さく、多少の遺伝子流動が成立してきた可能性があると考えられた。